どんな山?
新潟県魚沼市と群馬県みなかみ町の境界にある標高2,141mの日本百名山です。
山頂の北東約0.2kmに二等三角点「平岳」(標高2,139.6m)が設置されています。
なぜ日帰り最難関?
平ヶ岳は自然保護のため、山小屋や避難小屋がなく、幕営は原則禁止されています。トイレは登山口にあるだけで道中ありません。
一般的な登山道のコースタイムは往復でなんと約12時間!日本百名山の中で「日帰り登山の最難関」と言われています。
平ヶ岳を登るにはしっかりとした装備と体力が必要です。必ず他の山で経験を積んで、体力をつけてから登りましょう。初心者・初級者が登ると途中で体力が尽き、行動不能になる可能性があるので危険です。
実際に途中で諦めて引き返す人が多数います。
他の山でもルートによっては往復12時間くらいかかるコースもあります。
(この場合、正規ルートに比べて大回りだったりします。)
平ヶ岳は正規ルートで12時間かかるので、余程の体力が無いと山頂に辿り着けないという厳しさです。
基本となる鷹巣登山口(上り6時間半、下り4時間)
基本的にこのルートしかありません。ショートカット出来るルート(後述)がありますが、条件があるので大半の人はここから頂上を目指します。
私の場合はコースタイムより早く全行程を終えることが出来ましたが、下山時の昼過ぎからあまりの暑さで15分歩いては15分休む…と言った感じで相当ペースが落ちました。
覚悟してましたが、真夏に登るのは熱中症のリスクが高すぎます。
涼しくなる秋がベストシーズンかと思いますが、晩秋だと日の入りが早いので注意が必要です。
2019.08.11_平ヶ岳 / cantaroさんの平ヶ岳・下台倉山・台倉山(新潟県)の活動データ | YAMAP / ヤマップ
プリンスルートもあるけど、利用するには条件が
平ヶ岳には中ノ岐林道から頂上を目指すことが出来るコースもあります。このコースは正規ルートより4時間余り短いです。
このルートはかつて皇太子殿下が登ったことがあることから、「皇太子ルート」や「宮様ルート」、「プリンスルート」と呼ばれています。
ですが、このルートは銀山平にある特定の宿泊施設に宿泊した人のみ中ノ岐林道終点の登山口までの送迎してもらい利用することが出来ます。
送迎してくれる主な宿一覧
代表的な宿をご紹介します。詳しくは、直接に宿にお問い合わせください。
自転車で中ノ岐林道終点まで行って登る人もいるみたいですが、体力をかなり使うのであまりオススメはしません…
鷹巣登山口の駐車場
国道352号線にある無料の駐車場です。約20台ほどしか停められません。駐車場にトイレがありますが、このトイレが全行程で唯一のトイレです。
ここに駐車するには前泊が基本です。行程が長いので朝の4時には登り始める必要があります。そのためには夏至でも日が昇らない3時には駐車する必要があります。
登りに来る人はそれを知っているので前泊します。前の日の夜中に満車になるので日の出後に来ても「時既に遅し」です。
午前5時前には出発しよう
コースタムが往復約12時間なので暗く前に下山する必要があります。
夏至に近い7月中旬、夜が明ける前の午前5時までには出発します。
夏至に近い日だったのでヘッドライトは不要でしたが、秋に昇る場合は真っ暗な状況で登らないといけません。ヘッドライトを忘れずに。
水分はどんなに摂っても摂りすぎるということはない
とある有名な言葉ですが…
ここから頂上まで往復12時間の長丁場。暑さが予想されるので日帰り用のザックの中はほぼ水。4Lほど持っていきました。
うっすらと空が明るくなり始める頃、この時点で駐車場は満車でした。
鷹巣登山道から山頂を目指す
序盤にある「下台倉沢」が唯一のまともな水場
登山口から約500mほど歩くとたどり着きます。
ここが道中、唯一の水量が約束された水場です。ただ、序盤すぎるので行きは通り過ぎるだけです。下山時にお世話になりました。
正確にはここから頂上まで水場は岩倉清水、白沢清水、姫野池付近の3カ所あります。
時期によっては枯れていたり雪に閉ざされていたり、濁っていたりするのであてにしないほうが良いです。
山頂まで10km…
森に佇む山頂まで二桁kmを示す悲しい表示…まだまだ道のりが長いことがわかります。
画面奥に見えている「クマ注意!」看板にも注目。幸いにも会うことはありませんでした。
下台倉山のやせ尾根
全ルートでここが最も注意が必要となる核心部です。両端が崖になっているので注意です(特に下山時)。
太陽が昇る前なのに暑くて汗が止まりません。下山時はもっと暑くなるのが容易に想像出来ます。
日光を遮る木が無いので下山時は直射日光を受けることになります。
遠くに見える燧ヶ岳
遠くに霞んで見えるのは尾瀬にある燧ヶ岳です。
下台倉山頂上(平ヶ岳山頂まであと7.2km)
ここまでここまで来て山頂まであと7.2km。まだまだ先は長いです。
遠くに見える平ヶ岳山頂
まだまだ遠いです。あそこまで行くと思うと気が遠くなりますが、天気が良いので何のそのです。
姫ノ池まで後少し
ここまできたら山頂が見えるので元気が湧いてきます。
画面右側に見えるピークが姫ノ池がある池ノ岳、画面左側に見えるピークが平ヶ岳です。
姫ノ池に到着、最後のひと休憩
画面奥に見えるピークが平ヶ岳山頂です。コースタイムで30分くらいで着きます。
ここに着いたときはまだ誰もいなかったのでウッドスペースに大の字になって休んでました。青空の元、誰もいない空間で過ごす時間は最高です。
下山時にはここに20人くらいいました。登る時にちょっとお話した方がここで休んでいたのを見かけ、お互いに「気をつけて」と声を掛け合って別れたのを思い出しました。
平ヶ岳山頂へ!
ここまで来ると山頂までもう少しです。視界が開けているので歩いていて気持ちいいです。
山頂付近は木道で整備されていて歩きやすい
山頂は広々、展望抜群
山頂は木道で整備されているので歩きやすく、休憩スペースもあります。
ここの雰囲気は日帰りで来れる雲ノ平のようです。
ぼーっと景色を眺めていたいですが、暑くなる前に下山しなければなりません。
木道の分岐から山頂の独標へ
木道の分岐を逸れると何やら木の棒が…
独標は木に囲まれて囲まれて展望無し
登り始めること約5時間30分。山頂に着くことが出来ました。
平ヶ岳の本番は下山!
下山の頃には太陽は完全に登っているので気温がどんどん上昇してきます。下山時は標高も下がるのでさらに気温が上がるので熱中症に注意です。
案の定、今までで一番キツい下になりました。
白沢清水の冷たさに救われる
気温も上がり、灼熱になってきます。水の残量に気をつけながら下る必要があるため、出来る限り水をセーブして気温が上がりきる15時までには駐車場に着きたい…
そう思っていた時にたどり着いた白沢清水。ネットなどで写真を見ると沢というより水溜りです。
実際に見ても水溜りにしか見えない…飲料には不向きとありますが、試しに手を水につけてみようと思って水に触れたところ…
「つ…冷たい!氷水のようにキンキンに冷えてやがる!」
見た目からは想像出来ないくらい冷えてました。水量が少ない(水をすくうと泥が舞い上がる)ため飲めるものではありませんが、「首に巻いているタオルを浸せば首が冷えて熱中症予防になるのでは?」と思い水に浸して首に巻いたところ、アイスノンのように冷やされてとても快適になりました。
冷たさが持続する化学繊維のタオルだったので、その後1時間冷たさが持続し、順調に進むことが出来ました。
おそらく雪解け水が滲み出ているのでしょうが、秋になると枯れることもありますし、必ずしも冷たいとは限りません。「水があって冷たかったらラッキー」くらいの感覚でいきましょう。
ここのおかげで体温上昇を防ぐことが出来、下りの行程を順調に進むことが出来ました。
下台倉山を過ぎてほぼ水が尽きる
日の出前ですら灼熱だった下台倉山のやせ尾根。高い木が無いので直射日光をもろに受けます。
ここでは水を飲まざるを得ず、尾根を下りくる頃には4L持って来た水はほとんど無くなってしまいました。
あまりの暑さに15分休んで15分歩くという感じで急激にスローダウン…
白沢清水が無かったらもっと早い段階で水が水が無くなっていたかも知れません。
下台倉沢まで走った
尾根を下って歩いていると水が流れる音が聞こえました。
すぐに登山口からすぐにあった下台倉沢だと気づき、橋まで行けば水があるので余力を搾って走りました。完全にトレランです。
沢に着くと頭を水につけて冷やし、ほぼ空になったボトルに沢の水を入れてがぶ飲みしました。
この沢の水は「要煮沸」との情報もあります。比較的下流なので出来ればそうしたいところですが、この時はそんなことを思っている場合では無いくらい水を欲していました。
結局、駐車場まで走る
沢で生き返った後、駐車場前は約500m、なだらかな下り坂なので足の疲労がかなり溜まっていたこともあり、「踏ん張って歩くくらいならそのまま勢いに任せて走ってしまおう」ということで駐車場まで走りました。沢まで走った分と合わせて30分くらいはタイムを短縮したと思います。
まとめ
- 鷹巣登山口は往復12時間で日本百名山の日帰り標準コースタイム最長
- プリンスルートは短い時間で登れるが、特定の宿を利用した人が使える条件付き
- 鷹巣登山口を利用する場合、駐車場が満車になりやすいので前泊しよう
- 鷹巣登山口は朝の5時前には出発しよう
- 水場は下台倉沢、岩倉清水、白沢清水、姫野池付近の計4ヶ所
- 岩倉清水、白沢清水、姫野池付近の水場は枯れている(雪で閉ざされている)可能性がある
- 下台倉山のやせ尾根に注意
- 姫ノ池から平ヶ岳頂上は木道で整備されている部分が多く歩きやすい
- 白沢清水は運が良ければ夏場でもキンキンに冷えている可能性あり
- 標高がそれほど高く無いので夏場の下りは灼熱。
日帰り最難関ということで充分に準備して挑みましたが、想像していた通り厳しい行程でした。
5年連続で参加している六甲山全山縦走に比べたら総距離、獲得標高も半分なのですが、暑さが相当効いていると感じました。
ですが、下山後の達成感はこれまでの中でもピカイチです。